アンチ・グラビティガール「月ノ美兎」の魅力 

 

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ヴァーチャルユーチューバーの「月ノ美兎」をご存知だろうか。

ヴァーチャルユーチューバー、通称「VTuber(ブイチューバー)」について詳しくはないけれど、存在はまぁ認知しているという人が多いのではないだろうか。今回はそんな、VTuberの草分け的存在、「月ノ美兎」の魅力を語っていきたい。

 

月ノ美兎とは?

2018年2月7日、月ノ美兎は憧れのVTuber/バーチャルライバーとなった。緊張した様子からかわいらしく清楚な女の子かと思われたが、学生らしからぬ秀逸な言語センスとサブカル知識を披露。そのギャップ造詣の深さから人々の注目を集め、現在ではVTuber/バーチャルライバーをけん引する存在となっている。

出典:宮昌太郎(2020)『CONTINUE vol.65 月ノ美兎太田出版

 

「バーチャルユーチューバー」という言葉を聞いただけで嫌厭している人もある程度いるのではないかと思う。私もその1人だった。あの、自由の効かない奇妙な身体の動き、じっとこちらを観ている目、内輪ノリでわいわい騒いでいるあの独特な空気感…。左に並べたものは全部私がVtuberに対して抱いていた雑感である。未だに、あのコラボ配信的なので数人がこちらをジッと観ているサムネなど見るとゾッと悪寒がする。同じ理由でジャニーズのうちわなんかも怖いのだが、そんな話はどうでもいい。今回は月ノ美兎の話だ。(ここから少し自語りぽくなるので読み飛ばしてね) 私はVtuberについて今でも詳しいことは何もわからないのだが、少し前にバ美肉を通してVtuberを知り、なんとなく観たり観なかったりしていたところに月ノ美兎の存在を知った。知ったのは彼女の配信ではなく、彼女のオリジナル楽曲だった。

その楽曲が私のドツボにハマって(まぁ大好きな作詞作曲陣だから当然なんですけど)、曲を毎日聴いているうち、ふとどんな動画を普段上げているのか気になって彼女の歌以外の「配信」動画をなんとなく観てみた。私はラジオが昔から好きで、YouTubeでも音声のみで楽しめるものを好んで聴くので、彼女の配信も同じように「ラジオ」感覚で聴けると分かり、なんとなく家事をしながら聴いたりしていた。そしてしばらくするとYouTubeの再生リストに「月ノ美兎」のリストを作り、そのリストにはお気に入りの配信(その多くは雑談)がどんどん追加されていった。手を出してからハマるのにあまり時間はかからなかった。それがなぜなのか?っていうのをこれから話していきたいんだけどとりあえずそんな感じで、家事をするときやシャワーを浴びる時などに配信を垂れ流し、「好き」が溢れてきてファンアートを描いたり等、気づけば立派な月ノ美兎リスナーの1人になっていたのである。

 

自分語りはここまでにして。さて、「月ノ美兎」とは、『にじさんじ』というVtuberが多く所属する事務所の第一期生メンバーである。この『にじさんじ』で活動するライバーというのが、ほぼ自己プロデュースであり、ライバーによってそれぞれの個性を生かした配信を見ることができるというのが大きな特徴のようである。他のライバーをまだあまり知らないのでなんとも言えないのだが、月ノ美兎に関してのみいうと、彼女は自己プロデュースが恐ろしく上手く、そしてヴァーチャルユーチューバーという職業、ひいては「インターネット」との相性がすこぶる良いのだ。そんな月ノ美兎の配信の魅力。それは、

 

  1. 秀逸な言語センス
  2. エンターテインメント精神
  3. この世を楽しみ尽くそうという姿勢

 

この3つ(+α)である。

Vtuber界の委員長、さらにはエンターティナーでありアイドルでもある。そんな“カオス”な彼女の魅力を掘り下げていこう。

 

*

 

「わたくしは猫の交尾が見たくて見にいくんですけど」

 

 

「わたくしさ、猫のでっかい鳴き声ってたまにするじゃん『これ赤ちゃんなのかな?猫なのかな?』みたいな声、たまにするじゃん。『ホ、ホェエエエエエアァアアアッ』みたいな感じのが。(笑) たまにさ、ド深夜に外で鳴り響いてる時あるじゃん。わたくし、あれ聞いたら、瞬時にそこまで行くんだよね。ふふっ。(笑) 瞬時にさ、走っていくんだよねわたくし。いや、逃すな逃すな!と思って、“ガーッ”って走っていって。前もそういうことあってわたくし。コンビニ帰りに外歩いてたら、外から、遠くから『ンアアァァァ』って聞こえてきたから、『逃すな逃すなっ!! 乗り遅れるなこのビックウェーブにっ!!』って思って、その声のする方向にガーッって走ってったら、あの〜、ちょうど多分、交尾じゃなくって、わたくし交尾が見たくて行くんだけど、喧嘩中だったっぽくて。で、猫ってさ、最初に目逸らした方が負けってルールがあるらしくって、そう。あの、目をお互いにガーって合わせて、先に目を逸らした方が負けのルールがあるらしくてで、わたくしが、極力バレないように『スッ…』って覗いたんですよ。スッって覗いたら、奥側の猫だけわたくしに気がついちゃって、多分わたくしの方を見て、目逸らした認定になっちゃったんですよ。で、猫って、勝負がついた後に、背を向けて走っていったら、相手が本能で追いにくるから、ゆっくりゆっくり、目を見ながら後退りして行くしかないんだって、猫は。縄張り争いみたいなやつは。それ、わたくしのせいで負けたんですよ! 可哀想に。本当に。わたくしもゴメンッ!って思った。心底申し訳ないって思ったんだけど、奥の猫がわたくしに気がついて目逸らしちゃったから、あの、そのまんまゆっくりゆっくり後ろに、一歩ずつ一歩ずつ下がっていくんですよ。可哀想。ふふ。で、完全にその猫がいなくなったんですよ。で、あぁいなくなったか。ごめんね、って思いながらわたくし、そのまま家まで帰ったら、さっき勝負ついたはずの縄張りのところから、猫の『…ンニャッ!!』って鳴き声がして。これ、見てないけど、猫ガッツポーズしたんじゃないかって。(笑)あの、わたくしがいなくなった後、勝った猫が一匹で叫んでたんですよ、おかしくないですか? 多分…『ンン…ニャッ‼︎』みたいな声が聞こえてきたから、あ、これガッツポーズしてるわ、今。みたいな。ハハハ…(笑)」

(2021/10/25)『不死身の月ノ』より一部抜粋

 

これ、多分1番初めに見た配信動画じゃないかなと思うんだけど、一瞬で心掴まれましたね。テンポの良い喋り、「猫の交尾が見たくてダッシュする」という異常行動、そして綺麗にオチをつける話の構成のうまさ。喧嘩中の猫の片方が自分のせいで負け、夜に響く勝った方の猫の鳴き声を“ガッツポ”したと捉えるセンスは、ハライチの岩井勇気さんのフリートークにも通ずるものがある。岩井さんは、日常の何気ないひとコマを何倍にも膨らまして(虚構も交えながら)まるでファンタジーの様にしてしまうトークスキルを持っているが、月ノ委員長にも似た技術とセンスがあるように感じる。中学時代に『オードリーのオールナイトニッポン』のリスナーだった事も、トーク力に関係しているのかもしれない。(あと個人的に待機画面とBGMのシュールさも心掴まれたポイント。)

上に書いた喧嘩中の猫のトークのように、配信でするちょっとしたトークに委員長のセンス、そして“世の中を斜めから捉える独特の視線”が伺えるエピソードは、他にもたくさんある。是非配信で確認してほしいが、いくつかその片鱗が見えるエピソードをあげてみよう。

 

カップルチャンネルの需要について

 

「面白いと思うけどね。わたくしはカップルチャンネル見るの結構好きだよ。あの、みんなTikTokって知ってます? みんな知らないと思うから説明すると、縦に長い動画をね、こう、スワイプしていったら、あのなんか割と9.9割方しょうもないみたいな動画がね、(笑) 出てくるアプリがあるんだけど。なんかあれって、『興味ない』みたいなボタンがあるのTikTokって。そんなTikTokの中にも一握りの宝石はあるもんで、実は結構面白い動画とかも中にはあるんすよ。そう。わたくし一時期TikTok見てたからね。で、『興味ない』ってボタンを押すと、どんどん、自分のツボにはまんない動画がジャンルごと消されていって、その、理想のTikTokになるんだって。最終的に。そう。もう、何?『TikTok面白くないのはお前の努力が足りないからだ』みたいな、まぁ感じになるらしいんだけどさ。でもわたくし、そのしょうもねぇ』を肌で感じたくて見てるとこあるから。うん。なんか臭いものを嗅ぎにいっているみたいなとこあるから。あんまりね。使いたくないんだよね、それ(興味ないボタン)は。
…っていう感じだよ。カップルチャンネル見る感覚、わたくしは。」

(2021/08/28)『喋る10代』より一部抜粋

 

◯昔のネットと御学友の話

 

「ニコ動の週間ボーカロイドランキングを毎週見てたんですよ。で、結構オタクの友達の中で、2、3人の友達で「今日ボカラン見た?」みたいな感じの話をね、してたんですよ学校で。でその、ボカランの話で友達が「あのさぁ、2位の曲が出てきた時さぁ、『一位把握』ってコメあるじゃん。あれめっちゃムカつくよねぇ」って言われたんですよ。わたくし、「一位把握」って書いてたんですよ。(笑) (中略) わたくし全然悪意なく、それがムカつく人がいるってこととかが全く頭に無くって、普通に一位把握した時に「一位把握」って書いてたんですよ。(略) でね、それを話した次の日の、テストでね、漢字テストがあったの。でその漢字で、「はあく」ってひらがなが出てきて、これの漢字を書きなさいってやつが出てきたの。でわたくし毎回書き込んでるから、「はあくってアレじゃん!」ってもう一発で書けたの。で、その友達が「ニコニコのNGコメの中に入れてたから書けなかった!」みたいな(笑)「ちょっと待って、私把握って入れてたから書けなかった!」って。めちゃめちゃその時爆笑しちゃったって話がね。(笑) ありましたね。」

「(コメントを見て)そう、落語みたいな話でしたね。」

(2020/03/09)『買い出し行ってきたよ〜』より一部抜粋

 

日常的に起こった出来事や、感じたことなどをエピソードトークとして人に話すのは至難の業だ。私も「ガムトーク」という、紙に書かれたお題をもとにトークするというボードゲームを以前やったのだが、ひとたび自分を「話し手」と意識すると、普段テレビやラジオの番組などで芸人さんたちが軽快にしている“トーク”というのが、こんなにも難しく思い通りにいかないものなのかと衝撃を受けた。しかし委員長はそれを何気ない「雑談配信」で話の筋道を見失わず披露するのだ。しっかりオチもつけて。流行っているものやネット界隈で嫌厭されているものの話題に対しても、独自の見解を秀逸な言葉選びで話す委員長の感性は信頼に値する。

 

*

 

「わたくしが一蘭好きなのは“アトラクション”だから。“エンタメ”だからですよ。」

 

委員長の配信コンテンツの一つに「体験レポ」というものがある。体験レポとはその名の通り、委員長自身が行きたい/体験したい場所に行き実際どうだったかというのを、体験レポートとして自身で書いたイラストなども入った[自作のスライド]を交えながらプレゼンする、というもの。バーチャル世界の住人が、リアルで体験したことをレポートするという特殊なものだが、かなり手が込んでおり、それでいて終始委員長の軽快なトークで進められ、非常に分かりやすくそして興味をそそられる配信になっている。そんな「体験レポ」のなかで特に印象深く、委員長の魅力の秘訣が詰まっている『絶対に眠ってしまうと噂の店に行ったら電波だった』という動画を紹介したい。

 

 

「悟空のきもち」という予約の取れないほど人気のあるヘッドスパに行ってきたという委員長。いざ入店してみると謎のオブジェがいくつか置かれていたり、理解不能な映像が待合室で流れていたりと、なかなか香ばしい空間に迷い込んでしまったようだ。そんな“電波”な空間で体験したことをレポートしている。

 

 (店内を撮影した写真を見ながら)「すごくない?このセンスというか…。わたくしね、これ分かった。これ見て全部分かった。わたくし悟空の気持ちというもののアレが。これ、エンタメだわ。ヘッドマッサージって側面も確かにあるんだけど、これエンタメ施設、ですね。アトラクションですね。そう。これだってもう、これすごくないこのデザイン。絶対ツッコめって言ってるじゃん。そう。だってただただヘッドマッサージしたいだけならこんなこと…だって、もうアトラクションが人によっては8割ぐらい占めてるかもしれない…これはこういう施設、エンタメを観にくる場所なんですよ。
 一蘭と一緒です! そう、わたくし一蘭好きなんですよ。一蘭が好きな理由は、一蘭アトラクション”だから。エンタメ”だからですよ。そんなさ、『味集中カウンター』で味覚以外の五感を全てシャットアウトしてください‼︎ みたいなのってさ、そんなの普通はさ、普通はそんなこと、いくら自信があっても、その発想には至らないですよ。一蘭って、あの、トイレにトイレットペーパーが何個も何個もあるんですよ。で、それもだって一蘭がそれだけ神経質に、あのー、突き詰めてるってことの“演出”な訳じゃないですか。悟空のきもちもそういうことなんですよね。これって“エンタメ”であり、“アトラクション”であり、っていう。『貴方は絶対に眠れます! もし眠れなかったらそれは眠りが深すぎてわからなかっただけです』っていうのは、それはもう、そういうエンタメ。」

「別にわたくし眠れなかったけど、眠れなかったところまで一セットで本当に、堪能し尽くしたって自信がある、悟空のきもちを。本当に素晴らしかった。」

(2021/05/31)『絶対に眠ってしまうと噂の店に行ったら電波だった』より一部抜粋

 

結局、「絶対に眠ってしまう」という触れ込みだったにも関わらず眠れなかったという委員長。しかし本質はそこではなく、「エンターテインメント性」なんだと理解し、最終的には大満足したと報告してレポは終了。本来ならば目的達成ならず、で終わらせてしまいそうなところを、ラーメンチェーン店「一蘭」との共通点を挙げ、素晴らしいエンタメ施設だったとまとめ上げてしまう。のちにまた触れることになるが、委員長が物事を楽しむプロであることがこの話からは伺える。こういう話をしてる時の委員長、話す言葉の一言一言が力(ちから)入ってて良いんですよね。

 

◯脱出ボードゲームのススメ

 

この配信では、委員長が今までやったことのある「脱出ボードゲーム」というかなり変わったボードゲームの紹介(レビュー的なもの)をしている。

「脱出ボードゲーム」の他のボードゲームと違うのは、たった一回しかプレイすることができないところで、コスパ的にもなかなか攻めたゲームだが、“脱出ゲーム好き”で有識者の委員長のプレゼンはとても惹き込まれるものがあり、新たな楽しみツールをこっそり教えてもらっちゃった、みたいな特別感を感じることができた。

委員長は「映像研究会」に入っていた(入っている)こともあり、インターネットはもちろん、映画などのサブカルチャーの知識も豊富だ。映像関係の手伝いをしたり、「文化庁メディア芸術祭」に毎年参加していたり(2021/05/22 に配信『真夜中、あなたと記憶をたどる#1【アンリアルライフ】』にて)と、映像、エンターテインメントに関わるものの造詣が深い。委員長の配信を見ればその経験が生かされているのがよくわかるはずだ。ゲーム配信での着眼点は鋭く、ゲームにさほど関心のないリスナーでも楽しめる内容になっている。

 

*

 

「一緒に人生を神ゲーにしようかなと。」

 

 

「一緒に人生を神ゲーにしよう」。今でも名言としてファンの間で語り継がれてる委員長の言葉だ。

月ノ委員長は「死ぬまでにやりたいことリスト」というのをノートに書き溜めており、前に書いた「体験レポ」も、その「やりたいことリスト」に基づいて実際に体験してきたことを、レポ形式でリスナーに共有している。この名言が飛び出した配信では、自身が行きたいと常々言っていたという「断食道場」に行ってきた体験をレポートしている。この“断食道場に行く”ことは委員長にとってかなり重要だったらしく、というのも、委員長がこの配信をする前に彼女のオリジナル曲(『アンチ・グラビティガール』)の視聴が出てリスナーも聴けるようになっていたのだが、この曲というのが委員長にとっての「やりたいことリスト」や「体験レポ」が深く関わっていると自身で解釈しており、断食道場というずっと行きたいと言ってはいたものの、言い訳を作ってなかなか行けてなかったことに対して「やりたい事はどんどんやるべき」と思い、そのメッセージのこもった(と、自身が個人的に解釈している)オリジナル曲が出る前に、断食道場に行きたかったのだ、と委員長はレポの終盤に語った。この「やりたいことはどんどんやるべき」という精神は、委員長のVtuberの活動にしても、ヴァーチャル世界ではない“リアル”での委員長の生き方にも貫かれているものだ。配信終盤、月ノ委員長はこう語る。

「まぁでも結構わたくしは、やりたい事とかをね、色々やって楽しく、あの、人生をさせていただいているので。皆さんも、なんか楽しそうなものとかあったらお裾分けをしていただけると嬉しいなと思います。またちょっとそれもねー、みんなからオススメのB級スポットとかを募りたいんだけどね…。(中略) 是非是非みなさん、楽しそうな場所を見つけたらお裾分けをしてください。一緒に人生やりましょう。一緒に人生をね、神ゲーにしようかなーと。思いますわ。リスナーさん達。」

(2020/03/01)『専門家の元で食事を4日間抜いてみた』より一部抜粋

ただ自分に起きたこと出来事を面白おかしく話すだけに留まらず、「わたくしと一緒に、みなさんも楽しい人生にしていきましょう!」とリスナーに呼びかける。どこまでもボジティブでワクワクする提案に、リスナーは魅了され、そして「自分も何か、やり残したことがあったのではないか?」とリスナー自身も自分に問いかける。私も「やらない後悔よりやって後悔」だと考えるので、委員長のどこまでも人生を楽しみ尽くそうという姿勢にはとても感銘を受けた。

 

◯ロリータ服で、街を歩く。

 

ロリータ服を一度は着てみたかったという委員長。そういう系統の服に詳しいライバーと共にロリータ服を買いに行き、街を散策した体験をレポート。ロリータ服の難易度の高さに、途中体調を悪くする場面もあったものの、街で出会う人がロリータ服に意外と寛容であったこと、服が映える様な喫茶店でケーキを嗜んだことなどを語り、大満足の委員長。体験を終えた委員長はリスナーに対し、

「みんな本当はふりふりした服、着たくない?」

「『着づらいなー』と思う人でも、今こそ着るべきだと思う!」

委員長自身、ロリータ服どころか、ちょっとふりふりした服も着るのを躊躇う性格だった。しかしここでもまた「やりたいことリスト」的な発想というか「一度はやってみたかった」事。

「ロリータ服とかってさ、『私が好きなんだ周りの目は知るか』っていうことの、最たるものじゃん。生殺与奪の権を他人に渡すなみたいな感じのね。そういうもんじゃん。」

(2020/11/17)『雑談にじ3D ボイトレしたりロリータ服で街歩いた話する』より一部抜粋

 「ロリータ服は『それがしたかったらすればいい』の極致」とも話す。「やってみたいけど抵抗があるからやらない」のではなく、「それがしたいからする」。しかもロリータ服とは人目を気にせず自分が着たいから着るという性質を持つ服だ。結果、大満足の休日を過ごし、さらに家にロリータ服があるという特別感も感じられて大変良いのでおすすめ、と締め括る。

 

最初に、月ノ委員長を「Vtuber界の委員長であり、エンターティナーであり、アイドルである」と書いたが、この配信からは「アイドル月ノ美兎の片鱗が伺える。ここで、「アイドル」の本来の意味を今一度確認したい。

アイドルは、「偶像」「崇拝される人や物」「あこがれの的」「熱狂的なファンをもつ人」を指す。英語(idol)に由来する語。稲増龍夫やカネコシュウヘイは、日本の芸能界における「アイドル」を『成長過程をファンと共有し、存在そのものの魅力で活躍する人物』と定義してい。

出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』-【アイドル】より引用

一般的な認識である「憧れの的」的な意味合いでも当てはまるが、月ノ委員長は『成長過程をファンと共有し、存在そのものの魅力で活躍する人物』という定義がピッタリだ。先の配信の中でも、ロリータ服には付属品であるパニエやニーハイソックスなど、主役の服以外に必要になるものが多く、これを知った時、初めて化粧をしたときのことを思い出したと委員長は言う。化粧も、化粧をする前に洗顔、化粧水、乳液、化粧下地…と必要なものがたくさんある。「その事実を知った時わたくしは絶望した。視界がぐにゃ〜ってなった。」と話す委員長。女性なら共感できるのではないのだろうか、この感覚。他にもエピソードとして他ライバーの配信で化粧にハマっていることを暴露されたり(https://youtu.be/ZhtUWyaXcbg)、可愛い部屋着をおそるおそる購入したことを他ライバーにバレたり(https://youtu.be/1a2WPNF2y24)、段々とオシャレに目覚めていく委員長を見ると、何故だかとても愛おしく思えてくる。それは多分、バーチャルライバー月ノ美兎ではない、等身大の女の子としての月ノ美兎が、見えないところでも人生を楽しんでいるのが伺えるからなのだろう。

 

バーチャル世界のみならず、等身大の自分自身の人生も楽しみ尽くそうとする月ノ委員長。彼女の存在は、見ている者を退屈な日常から“まだ知らない場所まで”連れて行ってくれる力がある。リスナーはそれを見て、委員長の活動をただコンテンツの一つとして“受動的”に楽しむだけでなく、それこそ「やりたいことリスト」を作ってみたり、クリエイティブな委員長の活動を見て自分でも何か作ってみたりと、“能動的”に自身の人生も楽しもうという気持ちを抱く。これは現代社会にとって重要な関係性であると感じる。委員長の持つ「アイドル性」というのは、みんなの「憧れ」であると同時に、発信するメッセージによって受け取り側(ファン)の世界までをも変えてしまう。委員長がリスナーの手を引いて、見たことのない宇宙へ連れて行ってくれる。そういう意味でまさに委員長は「アンチ・グラビティガール」なのかも知れない。

(ライブ映像1:00〜)

今夜浮かんで宇宙まで

まだ知らない場所まで 君も乗せて

重力なんて知らない

ハリボテでもいい このまま

悠長な歌うたってさ これからのぜんぶも

笑いたい 笑ってたい 笑ってたい

笑ってたい!

ー『アンチ・グラビティガール/月ノ美兎

 

*

 

終わりに

さて、長きにわたって月ノ美兎の魅力について書いてきたのですが…。もっと好きなエピソードもたくさんあったのだけど泣く泣くカットした。例に挙げている動画からも分かるようにまだ最近の動画しか見れていないので、もっと深くいろいろ知ってからの方が良い記事が書けそうだと思いましたが、初めて知ったときの衝撃だったり感じたことは今しか書けないかなとも思うので、衝動で書ききりました。アンチ・グラビティガールという言葉も初めて知ったし、無重力的な意味かなーと軽い気持ちで書いてたら、実際は「反重力」という無重力よりさらに深そうな意味で、「これは過去の委員長の葛藤なども配慮に入れるべきか…」とか考えたけどそれも今はいいや、と思いこのような形と相成りました。

委員長の人を楽しませる力、そして自分も人生を楽しもうとする精神に触れて、リスナーである私たちの日常も、楽しいものに変えていきたいですね。

どこまでも連れて行って!委員長!!